なぜ現場の担当者だけが疲弊していくのか?
「最近、ちょっと疲れていて…」
初めてお伺いする現場で、こういう言葉を耳にすることがある。言っている本人は申し訳なさそうにしているけれど、見ていると全然サボっているわけじゃない。むしろその逆で、誰より早く来て、誰より多くの質問に答えていて、会議でもいちばん詳しい——そういう人が言っている。
外から入ってきた私の目には、その構図がわりとはっきり見える。
優秀な人ほど、ボトルネックになりやすい
仕事が早く信頼されている人には、自然と依頼が集まる。「これ、○○さんにお願いできますか」が積み重なって、いつの間にかすべての業務がその人を経由するようになる。
確認待ち、判断待ち、調整待ち——その人が手を止めると、チーム全体の進行が止まる。優秀であることが、組織の停滞を生む。なんとも皮肉な話だけれど、これはかなりの確率で起きている。
本当の問題は「付帯業務」の肥大化にある
疲弊の原因として、ボトルネック以上に見過ごされていることがある。付帯業務の肥大化だ。
付帯業務というのは、その人の専門スキルを必要としない業務のこと。たとえばマーケターであれば、本来の専門業務は「施策の設計・分析・改善」のはず。でも実際に何をやっているかを聞いてみると、こういうものが混在している。
- 制作会社への進捗確認メール(コーディネーター業務)
- 社内承認のための資料作成・回覧(事務局業務)
- ツールの入稿・更新作業(オペレーター業務)
- 他部署との日程調整(アシスタント業務)
それぞれ必要な業務だとは思う。でもこれ、マーケターがやらなくていい仕事だよな、というものが多い。「状況を把握しているから」「お願いしやすいから」——そういう理由で、専門家のカレンダーが埋まっていく。
「この業務、あなたじゃないとできませんか?」
現場に入ってまず行うことの一つが、担当者の業務を一緒にリストアップして、こう問うことだ。
「この業務は、専門スキルがなければできませんか?」
YESなら専門業務、NOなら付帯業務。実際にやってみると、担当者の業務の3〜5割が付帯業務で占められていることが珍しくない。これを切り離すだけで、本来の仕事に使える時間が大幅に増える。切り離し先として、私のような外部のディレクターが担うことも多い。
付帯業務を引き取ると、後回しにしていた仕事が動き出す
付帯業務を別の人に移した後、現場でよく聞くのがこの言葉だ。
「ずっと後回しにしていた仕事に、やっと手をつけられました」
後回しになっていた仕事の多くは、実は優先度が高いものだ。新しい施策の設計、競合分析、既存の改善——これらは時間と集中力がいるから、付帯業務に追われているとどうしても後回しになる。環境が整ったとき、担当者が本来の力を出し始める。それを見るのが、この仕事のなかでいちばん好きな瞬間かもしれない。
「疲弊」は、設計の問題
現場の担当者が疲弊しているとき、「もっと頑張れ」でも「もっと効率化しろ」でも解決しない。必要なのは業務の設計を見直すことだ。専門業務と付帯業務を分離して、それぞれに適切な担い手を置く——この設計変更が、担当者の疲弊解消と、組織の生産性向上を同時に実現する。
外から入ってきた人間の目は、そのための最初の一手に使ってほしい。