「手が足りない」。その感覚がなぜ起きるのか
「とにかく手が足りないんです。」
マーケティング担当者でも、プロジェクトマネージャーでも、事業責任者でも、立場を問わずよく耳にする言葉です。その都度「採用を増やすか、外注するか」という話になりますが、私の経験では、多くのケースで問題の本質は人数ではありません。
「人が足りない」と「ロールが足りない」は別の問題
人を増やしても解決しないケースには、共通した構造があります。仕事を進めるために必要なロール(役割)が定義されていない、という状態です。
ロールが定義されていない組織では、「誰かがやるだろう」という前提で仕事が動きます。結果として、責任感のある人や、声をかけやすい人に仕事が集中します。その人が「手が足りない」と感じるのは当然です。しかし、構造を変えずに人を増やしても、新しい人にも同じように仕事が集中するだけです。
「作るもの」ではなく「進めるためのタスク」を見る
ここで重要な視点の転換があります。多くの場合、チームが整理しているのは成果物(何を作るか)であって、推進タスク(誰が何をどう動かすか)ではありません。
たとえば「LP制作」という成果物があったとします。しかし仕事を前に進めるために実際に必要なのは、次のような推進タスクです。
- 制作会社への要件定義と発注(誰がやるか?)
- 社内関係者への確認・承認取得(誰がやるか?)
- スケジュール管理と遅延検知(誰がやるか?)
- 修正依頼の取りまとめと反映確認(誰がやるか?)
- 公開後の効果測定と次アクションの提案(誰がやるか?)
これらはすべて、成果物である「LP」とは別に存在する推進タスクです。この一つひとつに「担当ロール」が割り当てられているかどうかを確認することが、構造を見る第一歩です。
3ステップでロールの不足を洗い出す
現場での支援を通じて、次の3ステップが有効だと確認しています。
ステップ1:推進タスクをすべて書き出す。成果物の一覧ではなく、それを前に進めるために必要なアクションを書き出します。「○○を確認する」「○○に依頼する」「○○を判断する」という動詞ベースで書くのがポイントです。
ステップ2:各タスクに「担当ロール」を割り当てる。今現在、誰がそのタスクを担っているかを確認します。空欄になっているタスク、または一人の人間に集中しているタスクが、構造の弱点です。
ステップ3:不足しているロールに推進者をアサインする。空欄だったタスクに対して、そのロールに合致する人材を割り当てます。必ずしも新規採用である必要はありません。既存メンバーの役割を再定義するか、外部リソースを活用することで対応できる場合も多くあります。
「推進者」は専門スキルより「動かす意志」が重要
ロールのアサインで見落とされがちなのが、推進者に求める資質です。進めるためのタスクに必要なのは、高度な専門スキルよりも「期日を守り、詰まったら動かし続ける意志と習慣」です。
優れた企画者や専門家が推進業務を兼任することが多いのですが、これは本人にとっても組織にとっても非効率です。企画者は企画に集中し、推進者は推進に集中する——この役割分担が整ったとき、「手が足りない」という感覚は大きく解消されます。
人を増やす前に、ロールの地図を描く
採用や外注を検討する前に、一度「仕事を進めるための推進タスク」と「それを担うロール」を整理してみることをお勧めします。多くの場合、必要なのは人数ではなく、役割の明確化です。そしてロールが明確になれば、どのような人材が必要かも自ずと見えてきます。